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睡眠時無呼吸外来
近年、欧米では高血圧の原因としてまず睡眠時無呼吸症候群(SAS)を鑑別することが必要とされています。当院では内科を併設していることもあり、高血圧の患者さまにはできるだけSASの精査をさせていただいております。開院以来、フクダ電子社製のPulse Sleep LS-120を4台使用しSASのスクリーニングを行っております。これまで無呼吸低呼吸指数が40以上であった355名の患者さま(令和元年12月31日現在)にCPAPを導入しております。院長がCPAP療養士であり、CPAP患者さんに対する問題点となる、鼻マスクをいかにうまく使用していただけるかを患者様と同一視点にたって検討しております。鼻に対する、薬物療法、手術療法も積極的に施行しております。下記のごとくCPAP療法に対する鼻閉管理の重要性を報告しております。
1.松吉秀武, 後藤英功, 山田卓生:耳鼻咽喉科無床診療所における自動的持続陽圧呼吸療法(autocontinuous positive airway pressure)管理についての臨床的検討. 耳鼻と臨床 65巻6号: 167-174, 2019
内容: 無床診療所である当院にて導入した auto CPAP
症例の長期継続に影響を与える因子に ついて臨床的検討を行った。全体の継続率は1年後で 83.7%、5 年後で 70.6%、10 年後 で 60.0%であり、過去の報告と比較してやや良好であった。離脱は1 37 例でありマスク が原因であった症例が 81 例(59.1%)であった。このうち、鼻閉が 19 例と最も多くを占 めていた。そのため鼻閉改善手術の有効性について検討した。鼻閉の自覚がなく鼻閉改 善手術を未施行の症例(A 群 442 例)と、鼻閉があり手術を施行した症例(B 群 47 症例) と、鼻閉があるが同手術未施行症例(C 群 29 症例)を比較検討した。8 年後の継続率は A 群で 62.8%、B 群 83.9%、C 群で 25.9%であった。鼻閉改善手術を施行した B 群におい て有意差をもってCPAP 継続率が高値であった。CPAP継続率を高めるには鼻閉改善手 術を含めた鼻閉の管理が重要であると考えられた。
2.松吉秀武, 後藤英功, 山田卓生:自動的持続陽圧呼吸療法(auto continuous positive airway pressure)管理中に脈圧、低呼吸指数が上昇し大動脈弁閉鎖不全が判明した睡眠呼吸障害の1例. 耳鼻と臨床 66巻3号: 74-78, 2020
CPAPを使用することにより無呼吸、低呼吸を制御できていたにもかかわらず、脈圧と低呼吸の上昇を来たし、大動脈弁閉鎖不全と診断された比較的まれな睡眠呼吸障害の1例を経験したので報告する。症例は63歳、男性。昼間の眠気を主訴として受診。簡易無呼吸検査にて無呼吸低呼吸指数が41.1でありCPAPを開始した。約4年後より徐々に脈圧と低呼吸の上昇を来した。原因は大動脈弁閉鎖不全と、それに伴う左心不全と考えられた。さらに睡眠中に臥床状態となるため、下肢から心臓に戻る静脈還流が増加し、肺がうっ血状態となり、肺における迷走神経を刺激し、過換気反射を誘発した。このためPCO2が減少し、呼吸を刺激するレベル以下になり呼吸中枢が抑制され、低呼吸が増悪したと考えられた。CPAP使用中の症例に対して、無呼吸の経過を診るのみではなく脈圧、低呼吸に変動がないかを慎重に診ていく必要があると考えられた。
3. 松吉秀武, 山田卓生, 後藤英功, 川上和伸:自動的持続陽圧呼吸療法(auto continuous positive airway pressure)管理中に低呼吸指数の上昇とチェーンストーク呼吸を来し、陳旧性心筋梗塞と慢性心不全が判明したため、順応性自動制御換気(adaptive servo-ventilation)を導入した睡眠呼吸障害の1例. 耳鼻と臨床 68巻1号: 61-68, 2022
閉塞性睡眠時無呼吸症候群に対してCPAP使用と鼻閉改善手術を施行することにより無呼吸、低呼吸を制御できていたにもかかわらず、CPAP開始から12年後に急激に低呼吸の上昇を来し、チェーンストーク呼吸を認めた。陳旧性心筋梗塞、慢性心不全と診断され、冠動脈手術後にも中枢性無呼吸が持続するためにASVを導入した比較的まれな睡眠呼吸障害の1例を経験したので報告する。症例は77歳、男性。昼間の眠気を主訴として受診。簡易無呼吸検査にて無呼吸低呼吸指数が44.0でありCPAPを開始した。約8年前より緩徐な脈圧上昇と急激な低呼吸の上昇を来した。またチェーンストーク呼吸を認めた。陳旧性心筋梗塞、慢性心不全により中枢性無呼吸へと移行したと考えた。冠動脈手術を施行されたが、心機能、無呼吸が回復せず、ASVを導入し無呼吸低呼吸指数は9.9となり、ASV管理を行っている。CPAP使用中の症例に対しては、無呼吸低呼吸指数を診るのみではなく低呼吸に変動がないか、チェーンストーク呼吸など生命に危険を及ぼす呼吸状態がないかを慎重に診ていく必要があると考えられた。