2021/05/31
甲状腺原発扁平上皮癌は稀な疾患であり、その予後は非常に悪いことが知られている。今回2年以上再発なく経過良好であった甲状腺扁平上皮癌の1例を経験したので報告する。症例は68歳男性。前頸部腫瘤を自覚したため近医を受診した。腫瘤は数日で急激に増大し、軽度の呼吸困難感が出現した。CTにて甲状腺右葉に腫瘍を認め、細胞診で低分化型扁平上皮癌の診断を得た。当科紹介となり、発症から17日目に甲状腺全摘、右根治的頸部郭清術、上縦隔郭清術、気管環状切除および端々吻合による再建を行った。気管切除は9気管輪に及んだが、縫合不全や誤嚥などの合併症は見られなかった。その後化学療法、放射線照射を行い、術後2年4カ月再発なく経過良好である。発症早期に徹底した根治手術を行えたことが、予後良好であった一因と考えられた。また気管端々吻合による合併症予防を考慮した術後管理が重要であると考えられた。