2021/05/31
今回われわれは3例の小児・若年者(19歳以下)甲状腺乳頭癌症例を経験し、主に治療方針について文献的考察を加えて報告する。3症例とも広範な両側頸部リンパ節転移を有し、1例に多発性肺転移、また、残りの2例にも肺野に小結節陰影を認めた。全例に甲状腺全摘出術、両側頸部郭清術を行い、1例は患側の反回神経浸潤を認めたため、神経切除のうえ神経再建術を行った。また、全例、術後にI131大量療法を施行した。多発性肺転移例は現在も肺野に結節陰影を認めているが、治療後16年経過し明らかな増大傾向はない。また、1例に術後鎖骨下リンパ節にI131の集積を認めたが、リンパ節径の増大傾向やサイログロブリン値の上昇がないため、現在は外来にて厳重経過観察を行っている。全例生存し、日常生活に支障を来す合併症は認めていない。小児・若年者甲状腺乳頭癌の場合、腺内転移、リンパ節転移、肺転移の頻度が成人症例よりも高いという特徴がある。そのため、甲状腺全摘出、徹底した頸部郭清術を行い、必要に応じてI131大量療法を施行する必要があると考えられる。