2021/05/31
副咽頭間隙に発生する腫瘍は全頭頸部腫瘍の0.5%を占め、比較的まれな腫瘍である。その70-80%は良性で、20-30%が悪性とされている。病理組織は神経鞘腫、多形腺種、傍神経腫などが大部分を占めている。副咽頭間隙には重要な血管や神経が存在しており術後合併症が問題になることがしばしばある。これに対して手術適応についての詳細な検討が少ないのが現状である。今回、当科を受診した副咽頭間隙腫瘍症例を対象として、その存在部位(茎突前区と茎突後区)に着目し、本症の手術適応について検討した。茎突前区の腫瘍は、悪性腫瘍や腫瘍内出血を起こし気道閉塞をきたすような症例が含まれており、早期に手術を行うべきである。茎突後区の腫瘍は、経過観察を行っても増大傾向にあるものは少ない。このため大きさの変化、症状をみながら手術適応を慎重に見極めるべきである。術後合併症としてのFirst Bite Syndromeは難治性であり、茎突前区、茎突後区に拘わらず副咽頭間隙腫瘍の手術を行う場合には十分な術前の説明、発症させないような手術操作が必要である。