2021/05/31
化学療法後にSIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)をきたした比較的稀な症例を経験したので報告する。症例は51歳男性。上咽頭癌、肺転移にて平成12年に放射線化学療法を施行。TPF(Docetaxel+CDDP+5-FU)療法を平成18年7月下旬から1コース行った後、8月上旬より意識レベルが低下した。血清Na値117mEq/lであり、診断基準により、SIADHと診断した。Na補正、水制限、ステロイド内服にて血清Naは130 mEq/l程度に保たれ、9月下旬に退院となった。本症例はDocetaxelとCDDP使用後に発症したことから、薬剤性SIADHと考えた。本症による低Na血症を念頭に置き、化学療法後の電解質バランスに対する十分な注意が必要である。