2024/08/01
2023年3月から2024年12月までめまいを主訴に、当院を受診した症例は1500例であった。片頭痛の一次スクリーニングによる片頭痛症例は369例であり、全めまい症例の24.6%であった。片頭痛症例のうち前庭性片頭痛(以下VMと略)確実例は57例であり、全めまい症例の3.8%であった。初診時から4週間経過を追跡できたVM確実症例37例に対してミグシスⓇ+メリスロンⓇ+アデホスⓇの3剤併用投与の有効性を検討する前向き研究を行った。頭痛の評価方法としては、治療開始前2週間の鎮痛剤使用回数と、治療開始後2週目から4週間後までの鎮痛剤使用回数を指標とした。前回報告したミグシスⓇ単独投与群では頭痛改善率が28.6%であった。本報告では頭痛の改善率は43.2%であった。効果が不十分であり、他の予防薬との併用、長期的な治療が必要であると考えられた。めまい症状の評価方法としては、めまいによる日常生活の障害度のアンケート(以後DHIスコアと略)を用いた。DHIスコアは初診時が平均45.4±19.8点、2週後が平均32.1±24.4点、4週後が平均22.1±22.1点であった。初診時と2週後の間(P=0.005)では、有意な改善を認めた。及び、初診時と4週後の間(p=0.00002)にも有意な改善を認めた。ミグシスⓇ単独投与群と比較し、初診時と2週後の間に有意な改善を認めた。今回の3剤併用により、めまいについては早期に改善がみられることが示された。Jacobson GPらの報告に基づくと、ミグシスⓇ単独投与群では、めまいの有意な改善率46.4%であった。本報告で62.2%であった。このようにVMに対しては、片頭痛予防薬のみと、同薬剤に内リンパ水腫改善に有効な抗めまい薬を併用することで、頭痛、めまいともにやや改善したが、有意差は認めなかった。今後、使用対象年齢などに留意しながら予防薬を複数個使用する。さらに頭蓋内圧の低下、内リンパ水腫に有効な薬剤を使用し、片頭痛の悪化を防いでいくことが、VM予防にも必要であると考えられた。患者自身で対応できることについて啓蒙していくことも含めて、難治性であるVM治療に対応していくことが必要であると考えられた。