熊本県宇城市の松橋耳鼻咽喉科・内科クリニックです。めまい、耳鼻咽喉科、内科に対応し、睡眠時無呼吸症候群、舌下免疫療法も行っています。

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松吉 秀武, 三輪 徹:熊本地震後めまいに対する心理的因子と環境因子に着目した臨床的検討:Equilibrium Res Vol.75(4) 189-200、2016
熊本地震の本震発生から3日後の2016年4月19日から2016年5月14日までの約1カ月間を対象期間とした。対象症例を以下のごとく3つに群分けした。今回の地震後にめまいが増悪し、受診予定日以前に当院を再診した74症例を地震後めまい増悪(+)群とした。これまでにめまいの既往がなく、地震後に初めてめまいを自覚しためまい新患34症例を地震後めまい発症群とした。地震後にめまいの増悪はなく定期受診日に当院を再診しためまい症例106例を地震後めまい増悪(-)群とした。地震後めまいと動揺病(小児期と成人後の乗り物酔い)との関係について検討した。小児期の乗り物酔いのしやすさを、そのまま成人後も継続している症例に地震後めまい増悪(+)群、地震後めまい発症群が多かった。このことから成人しても前庭への刺激に対する適応がうまく進んでいない症例に地震後めまいは発症しやすいものと考えられた。地震後めまい後の心理状態について各種心理テストを行った、地震後めまい増悪(+)群において神経症は39.1%、自律神経失調が44.6%、心身症が31.1%、うつ状態が17.6%存在していた。地震後めまい発症群において神経症は41.1%、自律神経失調が58.8%、心身症が29.4%、うつ状態が23.5%存在していた。今回の地震後めまい増悪(+)群および地震後めまい発症群では過去のめまい症例に対する心理テストと比較し、神経症、うつ状態の割合が約2倍であり、自律神経失調、心身症は同程度であった。これより、地震後めまい増悪(+)群と地震後めまい発症群の心理的要因として、神経症、うつ状態が強いものであると考えられ、これらに対する対応が重要となってくると考えられた。不安傾向を反映する心理テスト(STAI)では地震後めまい増悪群(+)群においては、状態不安 (現在抱えている不安、ストレスの強さ)が、64.9%、特性不安(性格的に不安やストレスを抱えやすいか)が40.5%と、状態不安が有意差をもって高かった(0.001 < p < 0.01)。地震後めまい発症群においては、特性不安と特性不安の高さには有意差はなかった。地震後めまいと生活環境では、地震後めまい増悪(+)群、地震後めまい発症群ともに有意差をもって、自宅生活の症例が少なく、車中泊または避難所の症例が多いという結果であった。以上の結果から、神経症、自律神経失調、心身症、うつ状態、不安傾向に対するカウンセリングや薬物療法が必要であると考えられた。また生活環境において車中泊、避難所生活から解放できる対策を早期に行うことが行政面からの対応として必要であると考えた。