2021/05/31
蝸牛前庭症状を初発症状として発見される悪性腫瘍は稀である。耳鳴とふらつきを初発症状として、肺癌の内耳道転移と診断された症例を経験した。症例は39歳女性。左耳鳴とふらつき感が出現し、当科を初診した。純音聴力検査では左高音急墜型の感音性難聴であった。ステロイド内服を開始したが聴力は増悪した。MRIにて左内耳道内に腫瘤性病変を認め、全身検索にて肺癌の内耳道転移による蝸牛前庭症状と診断した。本報告の如く蝸牛前庭症状を主訴として耳鼻咽喉科を受診し、原発が肺癌であると判明したのは、本邦では初めての報告である。治療に抵抗して聴力が増悪する場合は、内耳道の腫瘍性病変も鑑別にあげるべきと考えた。